こっちでもそっちでもない表象
ルイジ・ギッリという写真家がいる。その昔どこかで見た気がしていてその透明な空気感が好きだったのだが、みすず書房から『ルイジ・ギッリ 写真講義』(ジュリオ・ビッザーリ/パオロ・バルバロ監修菅野有美訳みすず書房2014)なる本が出版された。これは地元の専門学校で行った写真の講義である。素敵な(というか何気ない)装丁で昔の記憶も重なり気に入って購入し少しずつ読んでいた。その中で彼は自分の写真は自分の世界でもなければ客観的な実在でもないと言っている。そうなんだ。この透明感は撮る人のエゴでもなければで場所の持つしつこさでもない。あるいはその逆かもしれない。そのどちらでもない、どちらにもこけそうな危うさがギッリの魅力である。と思っていたら青木淳さんが読売新聞の書評に同様なことを書かれていた。