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一本の木

一昨日の大雪、昨日の雨が一転今日は快晴。朝起きてジョギングをしながら今日は植樹会日和だと安心しました。建築を30年やってきて様々な式に出た経験はありますが、植樹式と言うのはこれが初めてです。そんな式が世の中にあると言うことさえ知りませんでした。それにしても少々大袈裟、たかだか木一本のためにここまでするのかと思わなくもありません。しかし木一本されど木一本というところがあります。
数年前私の卒業した小学校を訪れた時のことを思い出します。私の小学校は西武池袋線の江古田にありました。当時はそのあたりの団地に住んでおりました。師走の夕方、江古田の駅を降りて記憶を頼りに小学校を目指します。きっと様々な懐かしい風景に触れることができるのだろうと期待しました。ところがそんな期待は裏切られます。なぜかと言うとどこもかしこも建て替わっているからです。駅前の日大芸術学部も新品に入れ替わり、住んでいた団地もピカピカのマンションのようになり、そして小学校も昔の木造2階建ての面影はどこにもありません。鉄筋コンクリートの建物に代わっていました。そんな小学校の敷地の中をうろうろしているとふと懐かしい感覚におそわれたのです。それは卒業の時に記念に植えた木のあたりの風景でした。植樹した場所は芝生広場の一画。そのあたりには数本の木があり一体どれが自分たちの植えたものか分かりません。それでもそのどれかであり、とても大きくなった木を見ながら小さかった40年前が想像されるのです。そしてその時のことがノイズの入ったテレビ映像のように脳裏に蘇るのです。建物は建て替わっても木はそこにずっと生きていると感じました。木が自分と一緒に40年間を過ごしたその時間が現れているようでもありました。
私が生きている間に金町キャンパスが建て替わり、この木だけがここに残るというようなことはまずないでしょう。しかしこれから数十年後に自分が死ぬ前にこのキャンパスを訪れて大きくなったこの木を見ることはきっとあるでしょう。その時にこれから経過する時間をこの木は体現しているはずです。自分もだいぶ年寄りになっていることでしょう。木と私はその時間を分かちあうことになるのです。そして数十年前の晴れた日だったなと今日を思い出すのだろうと思います。

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