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建築におけるメディア分析の基礎


午前中西荻の家の施主検収を行い午後帰宅。読みかけの赤川学『社会問題の社会学』弘文堂2012を読む。赤川さんは元信大助教授で現在は母校東大に戻られた。彼は社会学の中でも構築主義を推奨する学者である。社会問題は一体だれがそれを社会問題と同定できるのかと考えそれが社会学者にあるのではなく社会にあると考えるのが構築主義的発想の基礎にある。つまり誰かが何かを問題だとして活動した時に社会問題は発生し、それに対するリアクションの連鎖を追うことがこのイズムの方法論となる。別の言い方をすれば社会問題とは客観的に存在するのではなく、人々の発言によって生まれるものだと言うことだ。
このことは例えば建築の美と言うようなものにもあてはまるものだと思っている。すなわち、建築の美的なるものとは客観的に存在するのではなく、誰かがそれを「美しい」あるいは「いいね」と言った時に発生するということである。ちょっと聞くといやいや黄金比のような絶対的な価値基準があるではないかという反論もあるかもしれない。もちろんそれは否定しない。しかし『インターナショナルスタイル』のようにヒッチコックとジョンソンが「これこそが20世紀の建築美」だと言ったことがシンプルボックスを加速させたこともまた事実なのである。
構築主義には客観性を欠くし、実態をとらえていないと言う批判があるそうだ。建築でこういうことをやるとたとえば雑誌における言説分析のような形になるが、全く同様の批判を浴びる。しかしこのことも現実の一部を表すものなのである。

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