世界建築史
パミラ・カイル・クロスリー(Crossley, P)佐藤彰一訳『グローバル・ヒストリーとは何か』岩波書店(2008)2012は世界史(日本史とかアジア史とかではなく)の叙述の方法論を4つに分類している。それらは
発散
収斂
伝染
システム
である。最初の二つは分かりやすい。発散とは歴史の起源のようなものがありそれが世界中に伝わっていくというナラティブである。一方収斂とは世界同時多発的に同じようなことが起こる。つまり世界があるルールの下に普遍的な動きに収束してくると言うナラティブである。
さて3つ目は少し水準の違う言葉のように見えるのだが、伝染とは伝染病のことであり、疾病が世界を変えて行くというナラティブである。4つ目のシステムとは分かりやすく言えばマルクスやダーウィンに始まり現在のウォーラー・スティンの世界システム論まで繋がる。
世界建築史を考えた場合、古代は発散し中世は収斂、伝染はないのだが、確かに現代はシステムと考えるのが分かりやすいかもしれない。そしてそのシステムの軸となるのは情報性であろうと思っている。つまり世界建築を動かしているのは技術とか風土とかというよりは建築的コモンセンスであり、それは文化圏ごとに異なる。しかしそれをこじ開けてつなぎ合わせているのがメディアである。しかしそのメディアの中を流れる内容物にはいくつかのタイプがあるように思われる、とても乾いたものと湿ったものその中間など。