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コルビュジエスロープの劇場性


ブエノスアイレスはアルゼンチンンの首都だが、ブエノスアイレス州の州都はブエノスアイレス市には無い。車で1時間くらい行ったラ・プラタ市にある。これって、日本にあてはめれば日本の首都は東京だが、東京都の行政機能は23区に無く、東京都の端っこのどこかの市か村にあるようなものである。権力の集中を防いでいるのだろうが面白い。
そこにコルビュジエの設計したクルチェット医師の家がある。3年前にも訪れたが、今回はしつこいくらいの説明付きでツアーした。それによると本当かどうか定かではないが、コルビュジエは一度もクライアントには会わなかったらしい。1949年にできたというからコルビュジエの住宅建築のピークは過ぎており強い一つの主張は見えない、逆に彼が開発した様々な建築ヴォキャブラリーの展示場にになっている。屋上庭園、ピロティ、自由な平面、自由なファサード、横連窓、ブリーズソレイユ、不思議な色、スロープなどである。
特にスロープはこの家の二つの機能である、住宅とクリニックをつなぐことと、訪問者を上階へ誘うという二つの機能を満足させている。さらにギーディオンが『空間・時間・建築』で指摘したように、スロープは建築の「時間性」を感じさせる重要なツールである。時間性というのは主体がその建築の中で移動するシークエンスの視覚情報を通して獲得すると同時に、他者の移動を観察しながらその劇場的な動きの中に見い出す場合もある。この写真はまさにそんな劇場性が現れていて興味深い。

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