佐藤雅彦ののらりくらり思考
ピタゴラスイッチなどで有名な佐藤雅彦の『考えの整頓』暮しの手帖社 2011は佐藤の日常の心に引っかかることが書かれている。この本ちょっと変っている。ふつうエッセイのようなものは普段の暮らしの発見をうまく脚色して鮮やかにきれいに小気味よく書いてしまうのだが、そう言う技巧が全部省かれてだらだらと書かれている。下手するとそのひっかかることが一体何なのと思うようなところもある。
「引っかかる」ということは、何かの発見ではない、何かに気付くということでもない。あれっ何だろうと思ったことがどうも上手く理解できないそんな心の状態である。
つまり本人でさえよく分からないことなのだ。そんなものだから読んでいる人間もなんだかよく分からない。でもそれを著者といっしょになってどの切り口で考えてみたらいいのだろうかということをのらりくらり探るのである。彼の思考の過程がそのまま字になっているような書き方である。こののらりくらりは彼独特のものかもしれない。だからあの不思議なヴィジュアルソリューションがうまれるのだろう。