ヴォリュームゾーン・イノベーション
朝一で古河へ。落札したゼネコンに初めて会い強烈な減額案を提示される。これからネゴらなければならない。そして時間が無い。それにしてもトリッキーなプロセスである。
行き帰りの車中で大泉啓一郎『消費するアジア』中公新書2011を読む。ちょっと目から鱗な発見。
ファッションの流行伝搬の法則としてソースティン・ヴェブレンの滴り理論という古典的法則がある。上流階級のファッションがそれに憧れる下位の階級へ滴るように伝搬するというものである。これは19世紀末の提唱であり、現在はこんなもんじゃあるまいと歴史の1ページにしまいこんでいた。ところが現在アジアで起こっていることはまさにこんな事である。
アジア市場において年間可処分所得が40万円から280万円の中間所得層をヴォリュームゾーンと呼ぶ。この市場は2008年現在アジアに9億人近くいて、市場参入のターゲットとなっている。さらにこの中間所得層の中でも40万円~120万円の下位中間所得層の増加率が高い。そこでこのゾーンを狙い商品開発が進む。これまで高嶺の花であった商品の、性能を下げ、デザインを捨てコストを抑え購買力の範囲に生まれ変わらせるのである。因みにそうした変革を「ボリュームゾーン・イノベーション」と呼んでいるそうだ。
ところが近年、情報網の発達により、ヴォリュームゾーンでの売れ筋商品は限りなく富裕者層の商品デザインに近いことが必須となってきたそうである。性能はともかく見た目は富裕層商品と同じが望まれている。これまさに上流への憧れである。階級社会は無くなったが経済的格差社会が代わりに登場し、100年前の滴り理論が現在進行中ということである。