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槇さんの群造形が相手にしたもの

槇文彦が1964年に編んだinvestigations in collective formというタイトルの出版物がある。ワシントン大学で出版されたものである。アーバンデザインの教科書として優れたものと言われながら公式な日本語訳はない(槇の群造形と言われることはよくあるが)。丹下論の中で60年代の「東京計画1960」、メタボリストの活動を読みながら、メタボリスト槇を正確に知るにはこの論考を読まないわけにはいかないと感じた。昔なら、そうはいっても手に入れるのは容易では無かったが、この時代、ネットをちょっと探せばどこかに落ちている。
この出版物には二つの論文が載っており一つが槇によるcollective form three paradigmというものである。タイトル通り現代の都市の視覚的環境を以下のように3つにカテゴライズしている。
① Compositional form:個がそれぞれはっきりと認識されつつその平面的な布置が構成的に一つのまとまりを持つもの。例えば法隆寺の伽藍配置。
② Mega-structure form:巨大な構造を持った連続体である。例えば60年代の丹下のユートピア的なメガストラクチャ。
③ Group form:恐らく槇が最も興味を持つものであり、個がシークエンシャルに連続し、一つ一つの独立性が低く、連続体として認識されるようなもの。例えばギリシャの白いヴィレッジ。
この3分類は恐らく世の中の物理環境のすべてを包含してはいない。規範となる可能性のある3つである。そしてヒルサイドテラスが③を規範として参照していることは明らかである。しかし東京のようなカオスの群れはこの3つには含まれてはいない。やはり60年代とは他のメタボリスト同様槇も理想に燃えてモデルを作った時代だったのかもしれない。都市の暗部に目を向ける(ダーティ・リアリズム)時代はもう少し遅れてやってきたというわけである。

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