現代の美を考える
秋庭史典『あたらしい美学をつくる』みすず書房2011を読んでみた。カントに端を発する美学の基盤がもはや現代では意味を持たず現代のそれは自然科学に依拠したものであることを解く。なぜ自然科学かと言えば「自然に目を見開かせる」のが現代における「美」の役割であるからだと言う。よってこの本には芸術はほとんど登場しない。感性や直観に基づく認識論も相手にしない。必要なのは情報を取得する認識論となる。
よって眼前に現れるフォルムよりそれを成り立たせているアルゴリズムに重点がおかれ、唯一アートらしき話として電子音楽、メディアアートには言及される。逆に言えばこんなコンピューティングアートがなぜ意味を持つのかを伝統的美学から始めそのあるべき変遷の姿を描くことによって説明した書でもある。