村松伸さんの家は林雅子の設計
昨日届いた村松伸『象を飼う』晶文社2004を読んだ。なんと建築史家の村松伸さんが林雅子の「ギャラリーを持つ家」を購入し、それを飼いならすという話である。もともと雑誌『室内』に連載したものを一冊にまとめた本である。そもそも村松さんが中古の家を探し始めた動機が振るっている。とある海の見える丘に建つ建築家の設計した家を取材した時に、自分が建築の批評をしたり歴史的に分析することに嫌気がさしたと言う。人の作った住宅に何か言うことに意味があるのだろうか?と疑問を持った。村松さんはただこの家に住みたいと切に感じたそうだ。そう思った時からこう言う「住みたい」と思う家を探して住むと決意し、家探しを始め、そしてたどり着いたのがこの家だったそうだ。この家を欲しい人がもう一人現れ、法的にもめて1年ごしで手に入れたこの家は既に5年も使われておらず、雨漏りはするは内装は剥がれるわでリフォーム設計を長尾亜子さんに頼み自分たち流に改造した。林昌二がその姿を「象を飼いならす」と称したのである。しかしそれにしても90坪近い家に家族三人ですむ贅沢を僕もしてみたい。そんな日が何時来るのか分からないけれど。ところでこの本の写真は浅川敏さんが撮っている。建築写真以外も取る浅川さんの写真には建物の匂いが立ち込めている(と隣席の木島さんが呟いた)。飼いならせていないのんびりした象の姿が感じられる。