男建築・女建築
建築の男性性vs女性性を考えている。きっかけは翻訳した『言葉と建築』にそういう章があったから。そして西洋建築はギリシア以来そういう評価の基準がある。言葉と建築で問題視しているのは建築形態である。例えばがっしりとして頑強そうな建築は男性的と言われ古来建築に必要な属性とされた。一方優美で華奢な建築は女性的であり、こちらはあまり評価されなかった。こういう形態の話とは別に、建築の使われ方の男女性について数年前ゼミで考えた。その時は日本の近代住宅が家父長制からその崩壊に合わせて平面が変わっているのに気が付いた。親父の居場所がなくなったというわけだ。つまり、その昔主人は書院で勉強をした、それが書斎になって応接になってついに無くなり、居間と言う名前になって主婦の居場所になったのである。つまり男から女のための作り方になった。というような変遷を西洋の住宅でも見つけられないかと考えた。後藤久『西洋住居史』彰国社2005は住居プランの変遷がエジプト時代から近代まで追いかけている。これを読むと男女性に関して二つのことが分かった。一つは古代エジプトにはハレムがあり中庭を挟んで一番奥に王の部屋があるが中庭の周りには10くらいの女性の部屋があること。二つ目は、古代には比較的小さな家、あるいは集合住宅のような一戸一戸こじんまりと住んでいたのが、中世から近世にかけて金持ちの家が出来彼らにとって応接の場所が重要になる。パーラーと呼ばれるこうした場所が邸宅の一番いいところに作られる。これが近代市民社会になると不要になり、家全体が比較的小さくなり、応接は居間へと変化する。モリスの赤い家などがその嚆矢かもしれない。西洋の住居史なんてあまり気にしたことが無かったが勉強になった。