民族分類
民族分類学folk taxonomyなる学問がある。Wikiによるとそれはvernacular naming systemとあり、scientific taxonomyと対照的なものと記されている。つまりそれはリンネの植物分類のような対象に即した客観的認識を問題にするのではなく、とある社会集団における精神的な分節システムを発見する学問(と理解した)と思われる。例えば、「母の兄弟の息子と母の姉妹の息子は、日本人にとっては同じ“イトコ”でしかないが、ある民族にとって両種の関係の区別は極めて重要であり、名称上の区別が存在する」とネット上に書かれている。同様に色を示す言葉の種類が多い国があったり、香りを示す言葉の種類が多い国があったりする。その差は現象認識力の差と言っていいわけだ。さて、そう考えるとこの学問はなかなか興味深い。つまり日本人に生まれた僕らの中にはおよそ気付きもしないような現象認識フレームが世界にはあるはずで、そうした認識フレームを知ることが新たな世界に出会うチャンスを秘めているからだ。もちろんこうしたフレームに手っ取り早く出会うのは旅行である。しかもインターネットも届かないような未開の地である。だから人類学者はそういうところに出かけて行くのであろう。しかしこのフレームも全く違うと建築的には参考にならない。ちょっと違う程度がちょうどいい。そのためには隣の異人に出会う程度が理想的(と勝手に僕は思ったのだが)。とは言え隣人の言語を知らないわけで、これではそんな興味も満たされない。