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右側が重要だということ

人間は左から右に目を走らせるものだそうだ(と視覚心理の本には書いてある中谷洋平編『美と造形の心理学』北大路書房1993)だから絵画などを鏡に映して反転させると大きく印象が変わる。ということを指摘したのはあの『美術史の基礎概念』を書いたハインリッヒ・ヴェルフリンだそうだ。ヴェルフリンは独論で『建築の心理学』(中央公論美術出版)を著しているくらいだから心理学には強いのであろう。それで彼曰く「目が最後に到達する画面の右側に最も重要な内容が置かれると、その重要性が正しく認識される」のだそうだ。ヴェルフリンはこの考えを建築にも応用したのだろうか?したかどうかは定かではない。『建築心理学』に言及部分があったかもしれないが記憶にはない。まあ様式建築では概ね左右対称だからこの考えを応用する場所はないだろう。だからあてはめるとすれば対称性が崩れたモダニズム以降であろう。さあ向かって右側に重要な形やら素材やら色やらが使われている建物はあるだろうか?そう考え始めると思い浮かばない。確かにモダニズム建築は機能に基づく構成をとることで対称性を放棄したのだが、その勢いで対称性に半ば依拠していたファサードという概念もいっしょにどっかにやってしまった。つまりどこかの面が重要であるという方向性も放棄した。だからモダニズム建築は特定のある立面を思い浮かべづらい。僕らがモダニズム建築を思い浮かべるときはだいたいがアクソメ的3次元ではなかろうか?ミース、ライト、コルしかり。そしてファサードがありそうな立面構成が思い浮かぶと案の定、対称性があまり崩れていない。古典性を残している。対称性とファサードは離れられないということか?サボワ、ユニテ、ファンズワース、レークショア、トリニティーチャーチ。うーん皆なんだかしっかり対称である!!何か無いかな?右側に重要な要素が置かれたモダニズムのファサード???

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