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バロック音楽の楽しみ

昼ごろバス一台を借り切り、学生を乗せて塩尻にある柳沢潤設計の図書館の工事現場に行く。彼は大学の用事で来られなかったのだが、コンテンポラリーズのスタッフの方と現場副所長、市の藤森さんに案内していただいた。3階のスラブが部分的に打ち終わった状態だった。コンペの時に提案された11メートルのプレキャスト壁柱100本近くが現実に出来て建っているのを見るのはちょっと感激だった。60個の免振装置も日本では初めてのようだ。5層の建物にそもそも免振をつけなければならないのは活断層の上に乗っているこの場所で難しい構造を評定で通そうとしたからのようである。しかし見るからに大変そうなこの現場を設計する方も大変だったろうと思うが、それを面倒みている市も偉いものである。
夕方研究室に戻り『西洋音楽史』の続きを読む。読みながら出てくる曲をずっとyou tubeで聞き続けてみた。この本はグレゴリオ聖歌に始まり、ルネサンス、バロック、古典、ロマンと続く。グレゴリオ聖歌、ルネッサンス、バロック音楽を聴くと小学生のころ住んでいた2DKの公団の団地の部屋のシーンが蘇る。今でも「名曲の時間」と「バロック音楽の楽しみ」というNHKラジオのナレーションが昨日のことのように聞こえてくる。両方ともラジオ番組タイトルでこの時間になるとラジオが鳴っていた。「バロック音楽の時間」では歴史的にちょっと前のルネッサンス、グレゴリオ聖歌も流れていたのだろう。僕のクラシック音楽の知識はこの時についてその後全く増えていない。しかしこれも今でも鮮明に覚えているが小学校の音楽室の壁に貼られていた音楽史年表に書かれていた作曲家はすべて知っていたしその人たちが作曲した有名な曲は流れてくればほとんど曲名が言えた。そのくらいそのラジオの威力は大きかった。だからこの本を読んでいてもデジャブという感じだが、その中で一つだけ以外な事実を発見した。それはバロック音楽とは「王の祝典のための音楽」でありそれはドラマでありその代表はオペラだという指摘である。「バロック音楽の楽しみ」ではきっとそんな曲も流れていたのだろうが、弦楽器をやっていた僕にとってバロックは自分で弾いた経験のある、バッハ、ヘンデル、ヴィヴァルディ、コレッリ程度である。しかしバロック音楽の中心はあくまで声だということを再認識させられた。そしてこの声の舞台はヴェルサイユ宮殿であり、そこで行われる宴の情熱は彫刻で言えばベルニーニだと書かれている。いままでどうしても音楽のバロックと造形芸術のバロックが繋がらなかったのだがやっと分かった気がした。

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