台風縦断
科研費応募の季節である。大学というところに来てからこれを出すことを促されて、まあ一生懸命書いているつもりなのだが未だに採択されたことはない。建築意匠系というのはどうにも社会のためになるように見られない、加えて研究と言う概念に当てはまりにくいせいか採択されない。さらに僕がやっているような建築でありながら社会学のようなこと(メディア論)や建築でありながら美学のようなこと(装飾論)はどうも相手にされない。残るは一昨年から始めたリノヴェーション論。これなら明確に建築の中に保存再生というジャンルがあるからひっかかりそうな気もする。とは言え、なかなか大きなお金をもらって行うほどの独創的な視点が見つからない。いやお金があればそれなりにやれそうなことはあるのだが、そうした研究は最終地点がずれる。研究は設計のためにやっているのであってそれ以外の何物でもない。研究のための研究を無理矢理作り出す気にはなれない。
恐怖の台風が速度を上げて予定より一日早く今晩本州を縦断予定。一日早まったのは総雨量も少なくて済むだろうから結構なことだが、加えて進路がやや西寄りに変わったのは不安である。信大に来てから初めて台風で休校のメールが送られてきた。そもそも長野は台風が来ない県であり、だからガラスの耐風圧計算も基準が低いくらいの場所なのだ。そのおかげで長野に設計した建物はかなりガラス代が安かった。にもかかわらず大学が休校になるほど確度が高い台風接近とはちょっと不気味である。