山岳建築シンポジウム2008信州
スイスイタリア語圏の建築家ルイネッリ氏、「いい仕事があったらおれに回せ」と軽快なジョークを飛ばしていた
7時ころ松本キャンパスの宿舎で目が覚める。外を少し散歩。さすがに松本は寒い。ダウンのロングコートが嬉しい。10時からシンポジウムhttp://ims.shinshu-u.ac.jp/081211.pdfが開催され。最初のスピーカーは私。そして助教の梅干野氏、筑波大学の安藤研究室の研究員でポスドクで信大に所属した樋口さんと続く。私のテーマは山岳建築の実践。梅干野氏のテーマは日本の山岳建築。樋口さんは日本とスイスの山岳建築の比較である。そして午後はスイスの建築家であるルイネッリ氏http://www.ruinelli-associati.ch/そして美術史家として建築の批評を多く行っている、レッツア・ドッシュ氏の講演である。ルイネッリしのテーマは私と同様自作の紹介である。ドッシュ氏は「建築と山岳景観」についてである。そして全員のシンポジウムへと続く。
スイス建築については日本の人にとってはボッタに始まり、現在はヘルツォーグ、ズントーというビッグネームにひっぱられやすいのだが、実は町医者のような建築家がとてもいい仕事をしているのだということを知らされた。ルイネッリ氏も町医者の一人でありながら、ヨーロッパの山岳建築の金賞を受賞し、作品集もある素晴らしい建築家なのである。彼らの特徴はシンポジウムの時に図らずも言った言葉に象徴される。それは「人が好むものを作るのではない。人の好みを気にしているとそれはポストカード建築になる」という。ポストカード建築とは素敵な一瞬を写真にしたキッチュなものである。日本的に言えばフォトジェニック建築と言うことになろうか?そして彼の作るものは「建築の質なのだという」。いかにもスイスの建築家が言いそうなことである。
樋口さんはズントーの事務所にいてルイネッリのところに移ったのであるがズントーと言う人はまさにこのルイネッリの言うような建築思想の人に見える。しかし樋口さんに言わせると、ズントーは人の好みを気にせず、質を追い求めているうちにいつの間にかローカリズムの建築家が世界的な建築家に祭り上げられた自分に驚いている、、、、ふりをしているのだという。へー。役者だなあ。しかしスイスにはそういう役者が生まれる土壌となる本当の質の高いローカルなアーキテクトがいるということである。昔のティッチーノ派の建築家たちを思い出す。
シンポジウムを終了後私は松本にもう一泊する。いつも長野と往復しかしないことを反省、明日はゆっくり松本を見ることにする。