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ヴァーチャル空間

午前中キャンパス計画の会議。昼食後雑用をいろいろ終わらせてアサマに乗る。車中クリストファー・ホロックス小畑拓也訳『マクルーハンとヴァーチャル世界』岩波書店2005を読む。薄い本なのですぐ読める。巻末の吉見俊哉の解説にヴァーチャル世界の大学教育が書かれていた。ネットが知の取得を容易にした一方で、学生(あるいは教師も)無意識的、意識的を問わず論理の剽窃を容易にしてしまった状況を述べる。しかしそれでもネットにおける知の可能性があるのでは?として自らの大学での事例を紹介している。それがなかなか面白い。授業タイトルは「吉見俊哉を打ちのめせ」である。内容はこうだ。授業の数日前までに教師はその授業で対象とする自分の論文を提示する。受講者はやはりネット上のスレッドにその論文についての批判を行う。それは事実誤認から論理の立案の方法までどのようなことでもよい。そして、このスレッドに書き込むということは既に書かれた内容に反応して、それ以上の批判を試みたり、それに影響をうけて逆にそれとは違う批判を試みるなど、バーチャルな相互関係が生まれるという。そしてこの批判をまとめて担当学生が代表して授業で吉見俊哉を批判し教師はそれに抗するのだそうだ。
これはなかなか面白い。そしてこの方法は僕が4年前から信大をはじめ、東大、早稲田で行っている「建築の規則」や「建築の条件」の講義方法と近い。これらの講義では講義ごとに簡単な議論のテーマを与えブログ上でそれにコメントさせるのである。その狙いは吉見と同様で、人の書いた内容を見ることにある。ひとが何を考え、それに反応したり、それを避けたりすることが、ヴァーチャルな空間の中で達成できるのである。90分の授業ではなかなか時間的にできないことがここではできるし50名近い学生がそれを短時間で共有できる所にヴァーチャル空間の可能性はある。

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