バシリカと民家
7月11日
早稲田に行く前に事務所に寄る。徹夜のT君が眠そうな顔で最後の図面をプリント中。聞けば完徹とのこと。プリントアウトして青図屋さんに図面を出したら仮眠をとるように言う。今日は早稲田の最終講義。といっても学生の発表。口を酸っぱくして、参考文献で自分の考えを相対化するように言っていたせいか、全員パワポの最後は参考文献であり、なかなか興味深い本が並んでいる。講義の最後にひとこと話した。
「建築家が幾ら頑張ったって日本の建築環境はよくならない。いい建築ができるためにはいい施工者といい施主が必要。しかしいい建築家・施工者・施主のいる確率は全て1/10。だからいい建築のできる確率は1/1000なのである。この確率を上げるにはもちろん自己研鑽もあるのだが、施主つまりは社会全体の建築民度向上が必須。いつかは施主になり、加えて日本の文化になんらかの形でかかわるであろう「文化構想学部」の君達に建築を理解してもらうことは大変意義深いのである」。と述べて講義を終了。事務所にもどり3時、5時と図説。図面が間に合わず詳細はフリーハンドスケッチを暫定的に提出。こんなことは初めてである。夜九州プロジェクト打合せ。何しろ時間がない。シンプルで重い建築。中世のバシリカ?磯崎の影響?そんなことを考えて下に降りると、伊藤君はロマネスクの本を読んでいる。集合住宅の居室に作る架構の連続体の参考にとのこと。僕の重い建築の話をしたら、民家の本を見せてくれた。バシリカと民家。和洋が錯綜する。