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差異の根源

3月1日
家でお手紙を書いたり、早稲田のパワポを作ったりしていた。夕刻、烏賀陽弘道『Jポップとは何か』岩波新書2005を風呂で読む。jポップという言葉の由来は洋楽しか流さなかったJwaveで始めて和楽を流すときにJwabeで流していい和楽を呼ぶ呼称として考え出されたものだそうだ。時1988年。バブルの真っ只中だった。それから音楽業界は様々な変身をとげるようだが、その一つに音楽製作技術がある。それはアナログからデジタルへの変身である。そしてその変身の最大の効果は音楽製作がコンピューターで行なえるようになったことだ。一枚のアルバムを作るのにスタジオを800時間、4千万かけるオフコースのようなアーティストはいなくなった。しかし、それによって音質がどんどん画一化していったという。というのも、音楽がコピーペーストできるようになってしまったからである。
はてさて88年とは僕がアメリカでcadを学び帰国して日建に入った頃である。日建には一台数千万するcadの機械が置かれてはいがた、誰も本気でこれが製図の主流になるなど思っていなかった。ところがいまやどうだろう、製図はもちろん、三次元ドローイングも殆どがデジタル化されている。ここでも音楽同様、コンピューター能力がデザインを決定するような画一化が進行している。かろうじて建築界が救われるのは、最後の制作の現場が建築家に委ねられていないこと。まだまだローテクな職人芸に任せられていることである。そして逆に言うと、建築の差異をかろうじて保てるのはこの部分でしかなくなっていく可能性があるという点である。ちょっとお寒い話である。

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