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愚行

T邸のスツールと事務椅子と絨毯をショールームでチェックするために新宿、五反田と回る。新宿アクタスを見た後で昼食。このあたりには餃子屋が多い。餃子を食べながら有吉さんのフェルメールを読む。小さい頃に両親が離婚したので父親を知らずに育った有吉さんは25年ぶりに会った父親にフェルメールの話をしたそうだ。日本で初めてピカソ展をやり、ボリショイオペラを呼んだ昭和の嵐と呼ばれた父親はフェルメールを熱く語る娘に静かに聞き入った後で一言こう言ったそうだ「なぜ芸術を説明しようとするのか」。その言葉の余りの正しさに餃子を食べながら涙が出た。僕と言う生き物は恐ろしく単純である。本当のことに弱い。大学の教員等になる前から、そういうものごとの原理をなんとか言葉で説明しようと一生懸命なのだが、そんなことの空しさも一番分かっている。でも原理は好きなのだ。だから哲学的にあるいは科学的に、物事の原理を知りたいと思う。しかし原理を超えた、あるいは原理から逸脱したところに常に美やそれにかかわる物があることが多い。ということもよく知っている。それゆえに自分の原理探求はどこかで常に壁に突き当たるのである。そんなことを見越している人たちが世の中にはいてそういう人たちの素朴な言葉に出会うともう勝ち目が無いという気持ちになるのである。しかしまた舌の根も乾かぬうちに同じ愚行を繰り返すことも分かっているのである。

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