医学と芸術展
ミケランジェロ 脚の解剖図
森美術館で「医学と芸術」展が行われている。医学は限りなく芸術的であり、芸術は生命を相手にする限りこれも限りなく医学に近い。というのがこの展覧会のコンセプトである。15世紀ダヴィンチに始まる人体への眼差し、解剖学の確立、が芸術分野に大きな影響を与えたのは言うまでもない。一昨年バチカンでミケランジェロを見ながらこのマッチョな筋肉は一体なんだ?と思っていたが彼の解剖学への興味のなせる技である。17世紀心身二元論を訴えたデカルトは人間のメカニズムに迫り、人間論を著した。丸山応挙が白波の上で座禅する骸骨を描いていたのは既に18世紀である。デミアン・ハーストの手術室の油彩は畳2畳ほどの巨大画であり、スーパーレアリズムである。彼の生命への興味は深いものがあったことを知る。ヴァルター・シェルスの5名の老若男女の生前、死後の写真は衝撃的である。生死の訴求力がどれほどのものであるかをよく示している。
アートが人の心を揺さぶり続ける限り、そのテーマの中から命が消えることはなく、そうである限りアートと医学の関係が途絶えることもない。