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ヴィルヘルム・ハンマースホイ

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ライアの風景1905
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若い女性の後ろ姿1884

国立西洋美術館でヴィルヘルム・ハンマースホイ―静かなる詩情」展が行われている。それほど世界的に名前が売れている画家ではないだろうし、僕ももちろん前から知っていたわけではない。街中でチラリと見かけたポスターが気に入って見たいと思っていたら、かみさんに誘われた。
デンマークの世紀末(19世紀末)の画家である。精緻な筆致と淡泊な色遣いは比較的穏当な絵画のように見えるが、当時のデンマークのアカデミーからは前衛として敵対視されていたようである。特徴的なのは女性の後ろ姿が多いのと17世紀オランダ絵画の影響を色濃く受けた室内画であろう。
静かなる詩情というタイトルが示す通り多くの作品から詩的な感興をもよおすのは確かだが、その原因はかなり計算されたフォルマリズムであることに気づく。もちろんで画家である以上構成や形に知恵を絞るのは当たり前としても、彼の注意は一貫性があり方法化されていたように思う。まず、印象的な形を前景化させるために不要な素材を描かない。あるいは自然を描くときも形が鮮明になるよう、近景、中景、遠景という遠近感が生まれる描法をとらない。この二つの方法を聞くとかなり抽象化された絵画を想像するが、そうではなく、こうした方法をとりながら徹底した写実主義なのである。それがクールな詩情を芽生えさせている。印象派がパリで全盛を迎えるヨーロッパの片隅でこうした絵を描いていた画家もいたのである。

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