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第三空間

八束はじめが『10+1』のブックレビューでエドワード・ソジャの『ポストモダン地理学』青土社2003(原著1989)という本を紹介していた。ソジャのこの本はその後書かれる『第三空間』青土社2005(原著1996)『ポストメトロポリス』(原著2000未訳)と合わせて彼の都市論三部作と言われている。
八束のレビューを読むと『ポストモダン地理学』は時間偏重の歴史主義的社会学を空間の重要性に目を向けさせたという意味で空間論的転回の書として位置づけられている。そして二番目の『第三空間』を今日読んだ。『ポストモダン地理学』は読んではいないので正確なことは言えないが二つの書の目次を比べるとルフェーヴル、フーコーに棹差し、空間論の重要性に触れながら、ロサンゼルス分析をするところは双方かなり類似した内容なのかもしれない。ただ第三空間というタイトルが示すとおり、二項対立的な価値観においてどちらかに振れるのではなく3つ目の価値を大事にする。それはルフェーブルの生きられた空間(表象の空間)でありそれを参考に自らの第三空間を提案している。さらにフーコーはそれをヘテロトピア(混在郷)と呼んでいるようだ。
さて話は変わるがチャールズ・ジェンクスが1993年に`heteropolis`という本を書いている。副題は los angeles the riots and the strange beauty of hetero architectureと言うものでロサンゼルスの多様な社会と建築について書いている。言語、人種、文化、植生、気候全てが単一的ではなく多様であり、それによって多様性を許容する建築ができていると分析する。その中心が、ムーア(故)でありゲーリー、イズラエル(故)、モス、モルフォシスとなる。
ジェンクス、はソジャとともにUCLA で教鞭をとっており、ソジャ経由でフーコーのヘテロトピアの概念を適用しているのかと思いきやそうでもない、もちろん本書では双方への言及はあるものの、上記図書からの引用などはない。むしろソジャがロサンゼルスの中にジェンクスと同様のheterogenityを発見した上で二項対立で割り切れない第三空間を主張したと見るほうが妥当なように感ずる。

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