日建設計を時代と場所で乱暴に4つに分ければ、林時代の東京、薬袋時代の大阪、それ以降の東京、大阪となる。それぞれの時代と場所にはその時代を代表するハイエンドの「作品」がある。
ではそれらが日建らしい建築かと問われればそうとも言えない。日建設計は世の中の安定したデザインの嗜好を保つ役割を持つ。分厚い中間層を相手にするのは大企業存続の必然でもあるからである。
その意味で日建らしさとはコンセントリックで品があり、使いやすく、長持ちするものである。そうしたデザインの筆頭は一連のオフィスビルである。しかしそう言うと一つ選べという質問の主旨に沿わないので、日建本社ビルをその筆頭にあげておく。
『NA建築家シリーズ05 日建設計』日経BP社2012 |