不条理
安藤忠雄の最初の作品集はたぶんこのSD81年6月号ではなかろうか?当時大学3年生だったが皆虜にされていた。しかし面白いのは、当時篠原一男、磯崎新が巨匠でいて、にもかかわらずポストモダン全盛期でマイケル・グレイブス、ロバート・スターンなんかがアメリカの風。そこに安藤忠雄もどーんと登場した。玉石混交だったのである。当時安藤40歳。
ページをめくると思い出されるあの感動。そして何がボクらを引きつけたのかとよくよく見たときに、当時の安藤建築にはある種の不条理があったようにいまさら思う。住吉の長屋にの外に出ないと行けない部屋。大楠邸の上げて下ろす動線。小篠邸の緑豊かな敷地で緑が見えない居間。建築が持っている一般的な作法を壊して、そこに生まれる別の「もの」のあり方を提示していることに「戦う男ボクサー安藤」を感じてブルブル震えていたのだと思う。昨今老獪になった。