自由の国アメリカ
ニューヨークに向かう飛行機のなかで西谷修『アメリカ異形の制度空間』講談社選書2016を読む。アメリカという国がなぜ未だに世界の警察でありたがるのかが分かる。彼らは自由世界と設定したこの地において自由を完成させるためそこにあった社会を排除するという原罪を犯しており、この原罪を隠蔽するには世界中を自由の国にするという彼らの当初のポリシーを完遂させなければならないからなのである。
アメリカとはヨーロッパ社会からはみ出た「自由」の国であり、その「自由」を裏付けるのが人に依存しないということであり、そのためには自らの「所有」によってそれを確立しなければならない。それゆえこの地では所有しているものが多いほど価値があり、そして自由なのである。それを前提に考えればトランプのような41にして資産3000億ドルの男がアメリカ大統領になったのは不思議なことではないのだろう。むしろ遅すぎたとさえ言えるのかもしれない。所有することで自由を獲得する人間こそが尊敬される社会なのだから。(ドナルド・トランプ、トニー・シュウォーツ、相原真理子訳『トランプ自伝』ちくま文庫2008)