「語りえないことについては人は沈黙せねばならない」
33年前にウィーンに来た時にはロースを見て回った。今回は時間がないがヴィットゲンシュタインだけは見たかった。谷さんに予約を頼み入ることができた。今この建物はブルガリア文化会館になっている。
だいぶ前だがバーナード・レイトナーの書いたヴィットゲンシュタイン邸の本を読んだことがある。アドルフロースに指導されて姉の家をデザインしたのがこの建物である。ややロース的なラウムプランを感じるが、ポイントはそこにはなくあくまで数学的な比例関係で窓と壁と天井高が決定されているところにある。そのプロポーションの意図はエントランスホールで徹底されるが、他の部分は意図が希薄である。「語りえないことについては人は沈黙せねばならない」という彼のマニフェストが建築となっているような風情である。「表現し得ないことについてはデザインしてはならない」。と言っているように見える。