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観衆の成立

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五十殿利治『観衆の成立—美術展・美術雑誌・美術史』東京大学出版会2008に目を通した。近代日本美術の鑑賞者はどのように生まれたのか?美術という分野が制度として作られ、それを鑑賞する場所としての美術館がこれもやはり制度として生まれたことによって観衆は醸造されたのである。それは美を求む人々の欲望による自然発生的なものではない。世界関係と政治によって作為的に作られたものなのである。それは美自体がそうであるように。
著者がいくつか啓蒙を受けた書が挙げられている。前田愛の『近代読者の成立』渡辺裕の『聴衆の誕生』には強懿影響を受けていると述べている。前者は未読なので早速注文した。後者はだいぶ前に読んでとても影響を受けた。ここでは政治的な力が音楽の聴き方を変えたというよりも、文化的枠組みの時代的変化が聴衆の趣向を変化させているという説明が多かったと思う。
何れにしても、聴く、見るという欲求が単なる人間の自発的なものだけではないということは心しておいたほうが良い。

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