外部不経済
宇沢弘文『自動車の社会的費用』岩波新書1974をトランジットのバンコクで読んだ。いまだにおそらく車が増え続けてどうにもならない状態にあるであろうダッカに行く前に読もうと思って持ってきた。74年私が15歳中学3年生のころの著作である。
その時宇沢はすでに消えゆく(消えてしまった)路面電車の復活を予言するような発言をしているのに驚く。なぜこれほどまでに自動車が増え続けているのdかといえば、ある経済活動が起こす社会的被害である「外部不経済external dis-economies」という概念が新古典派経済理論では一顧だにされないからだという。つまり車は車が引き起こす外部経済を織り込んだ価格設定が必要だというわけである。それは当然価格の上昇を起こしこれほどまでには増加し得ないことになる。
さてこの外部不経済の概念は車以外にも全ての経済活動に織り込まれなければならないものである。現代的問題でいえば原発が典型的である。原発が安い電力を作れるというのはこの外部不経済を盛り込まないから言えることである。
現在トラムが世界中で復活している。アメリカも20世紀初頭は路面電車が多くの都市を走っていたのである。そして東京もくまなく走っていた路面電車が失われたが復活の兆しがある。宇沢の予想が現実化しそうである。こうした反省を国も少しは考慮したらいかがであろうか。全ての経済活動をGNPで測るという愚行を改め外部不経済を考慮した社会を考えて欲しいものである。