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沈まないこと

村上春樹が小説家になったのは神宮球場の外野の芝生でビール飲んでいたらepiahany(天啓)がひらひらと舞い降りてきたのだという。そして書いた小説が『風の歌を聴け』で群像新人賞になってしまったのだそうだ。僕は建築家になるのにまったくepiphanyは無かった。どうしてだろう、過度の自信家ではなくいろいろなことを諦める人生だった。野球の選手を諦め、指揮者を諦め、ヴァイリニストを諦め、陶芸家を諦め、残ったのが建築家だった。そしてそれをやることには何の迷いが無かったのは不思議としか言いようがない。
ところで村上曰く、小説を書くほど簡単なことはない。特殊な技術も特別な教育も不要。だから突如いい小説を書く頭のいい人がいたりする。しかしこの世界にずっと居続けるのはとても大変なことだという。居続けるには資格がいるのだという。その資格とはとても簡単で、小説世界の海に放り込んでみて沈まなければ資格があるということだという。なるほどとても簡単である。おそらく建築もそうだろうこの建築という海原に居続けるのには資格がいる。それは建築海に放り込んでみて沈まなければ資格があるということだ。

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