稲葉なおとの篠原・坂本レポート
大学のクラスメート稲葉なおと氏から彼の書いた記事の載った雑誌YUCARIが届いた。マガジンハウスから出ており、定価648円。内容は日本の伝統文化を継承するのがコンセプト。第19号で特集は「美しき日本の家」。ここで稲葉氏は村野藤吾設計の旧佐伯邸、篠原一男設計の海の階段、坂本一成設計の祖師谷の家を紹介している。写真も文も稲葉氏である。彼の視線のユニークなところは単に建築の美しさを伝えるだけではなく、クライアントと建築家の関係を建築の中に見出すところにある。佐伯邸はもちろん近鉄中興の祖である佐伯氏、海の階段は日本画壇の重鎮野見山暁治、祖師谷の家はもと新建築編集長である石堂威。われわれプロの建築家にとっても名建築がクライアントとのどのようなやり取りの中で生まれたかはとても興味深い。一体施主は建築家に何を要望したのだろうか?野見山暁治が「広いアトリエを欲しい」と言って篠原は先ずは壁で区切られたアトリエおもっていきそのうちにその壁を取り除いていったという話はさもありなんである。野見山は篠原さんは最初から広いアトリエを構想していたに違いないと事後的に篠原の戦略を見破っているところもおもしろい。果たしてそれが本当ななのかどうかはもはや誰もわからないのだが。