人間の条件を読んで建築の条件を考える
アーレント「人間の条件」の概説書を読んだが厚くてなかなか手ごわい本だった(仲正昌樹『ハンナ・アーレント「人間の条件」入門講義』作品社2014)。正直読破は諦めた。途中からかなりの飛ばし読みである。この本最初に驚いたことがあった。それはこの本は講義録なのだが、その講義が行われたのは連合設計者市ヶ谷事務所なのである。この事務所のことは名前しか知らないが、面白いことをする事務所もあるものだ。
アーレントが言うように、この人間の条件で書かれていることは人間存在に不可欠な特質を構成するものではないのである。そうではなく人間が生きていくうえで行わざるを得ない営為としての労働、仕事、活動をはじめ人間の生きていくための必要条件が描かれている。そうした点で言えば僕がこれから描こうとしている建築の条件におけるジェンダー、消費、視覚、主体、倫理、階級、世界性というような問題系はまさに建築存在に不可欠な特質を構成するものではないのであり、現代において建築を考える上での必要条件なのである。
先日そんな話を坂本先生として、そうした建築の条件の殻を突き破るのが僕らの仕事だと思うと言ったら頭から否定された。そんな条件を突き破れるわけはないだろうと言われた。そうではなくそうした条件と無理なく付き合うことが建築なのだとおっしゃるのである。うーん。