谷口建築の真髄
午前中早稲田の演習を早めに終えて、高田馬場経由池袋からレッドアローで一路秩父。そこからタクシーで秩父太平洋セメントの工場へ。谷口吉郎の1956年の建物である。
1時間かけて工場内を歩いた。おさまらない猛暑で汗が噴き出る。東京ドーム6個分の敷地に連なる建物の屋根は建物高さ、平面形に依らず、ライズの低いボールトである。ボールトの多用は有名な写真で知っていたが、例外がないのには驚かされる。そして外壁の構成も統一されている。セメント系パネル、スチールサッシュ、レンガ、打ち放しのコンポジションであり、プロポーションは縦割り。
この建物群を見て最初に連想したのは東工大の講堂である。ボールトのライズ、外壁にたまに登場するレンガ、打ち放し、スチールサッシュ。プロポーションとマテリアルコンポジションの類似性である。
創業以来建築物のメンテはやっていないが雨漏り一つしていないとのこと。スチールサッシュは錆びているし、網入りガラスが割れているのはざら。コンクリートボールトの屋根の上には草が生えているのが下から見える。そのくらい何もしていない。それでも現役というのは立派なのだが、もう少し手をかけてあげないと建築が可哀そうである。