最高の料理を作ってください
本日は理科大の卒業式。1983年、30年前に自分の卒業式に出た記憶が無いしその後卒業式なるものには、教員時代を含めて出たことが無かった。しかし本日初めて出席した。そして「ああ卒業式っていいものだなあ」と思った。理科大管弦楽団がワーグナーを演奏した時は理由もなく涙がこぼれ「建築は音楽に及ばないなあと」感じた。いい音楽を聴くといつも建築をやっている自分に嫌気がさす。しかしなんとか建築にしがみついている。その後秋山仁さんの記念講演があり、「人生山あり谷ありだがゴールを見失うな、自分もそうだ」という言葉を聞きほっとした。「才能は努力の後についてくる」という秋山さんの言葉は僕もいつも言い続けている。「天才は努力する才」だと。
さて本日の卒業証書、修了証書という一枚の紙っぺらの重みは大きい。これで君たちは私大の高い学費をこれ以上払わなくていいということが証明されたわけである。そのことに対しておめでとうと申し上げたい。そしてこれからこの紙っぺらを使って思う存分今まで注ぎ込んだ資金を回収していただきたい。
この紙っぺらは君たちが星のついたレストランで働く資格を保証する。しかしまだ料理を客に食べさせたことのない君たちにとって何が一番重要なことなのか?食材か?料理法か?no! まだ君たちが全く経験したことのない、習ったことのない最も重要なことは、客が食べたいと思う時に一番いい温度で料理を出すタイミングの取り方である。
欲しいと思っている相手の気持ちを読むすべである。タイミングを逃すとだれも何も食べてくれない。これを肝に命じて最高の料理を作っていただきたい。おめでとう。