埼玉県の卒計審査会で思ったこと
埼玉建築設計監理協会主催の第12回卒業設計コンクールというのが開かれており、その審査に呼ばれて埼玉会館に行った。前川國男設計の重厚な建物で紀伊国屋のようなファサードと都美館のような階段が印象的。
このコンクールの始まりは埼玉にキャンパスを持っている大学の設計コンクール、と勝手に思っているのだが、例外もあるようで参加校は工学院大学・芝浦工業大学・東京電機大学・東京理科大学・東洋大学・日本工業大学・日本大学・武蔵野美術大学・ものつくり大学。経緯は知らないが理科大も仲間に入れていただいている。出品作は34。
審査員は正確に分からないが、各大学の指導教員に加え設計監理協会、学会、建築士会、JIAなどの方で全部で数十人いた模様。それぞれ数票持って投票。蓋を開けると1位、2位が期せずして理科大の学生だった。2人は学内の審査では同率2位だったからここで決着をつけていただいた。彼らにとってはもちろん喜ばしいことだったなあと思いつつ、内心この賞の意味は何だろうかと少々自分の中では消化不良。
というのもこの賞とは別に審査員特別賞なるものがあり、総合力に欠けても一芸に秀でた案はこちらに投票してくださいといわれていたのである。重賞は妨げないとなっていたがそちらの賞は違う学生が受賞した。
多くの審査員がなんの議論もせずに図面とプレゼンを見ただけで投票しその数字だけで機械的に順位を決めるならどうしても「そこそこの着眼点と分かりやすい形態、そして造りこまれた模型」があればよい点になる。つまり既成の価値観のスケールの中での最大公約数となり得るのだろう。
しかし卒計ってそれでいいのだろうかと思う。やはり多少無理があっても、多少独り合点でもこちらの想像力をフル回転すればなにかそこに新たな可能性が見えてくることが必要なのではと思う。
その意味では郊外住宅の風景の分析とそこからの形態化を探求した案に僕は最も魅力を感じた。しかしこの案は数多あったどの賞にもひっかかってはいなかったようである。議論の場があれば少し応援したかったのだが残念である。