ディテールは二種類ある
理科大二部のC入試の論文審査を行った後、真鍋先生の退官記念最終講義を聞いた。真鍋先生の幅の広さに感服。理科大に来て一年目の僕は真鍋研の論文を発表会で初めて聞いて、結構批判的な意見をした。その批判に対する回答を今日みっちり聞けた気がした。
夕方学士会館で退官記念パーティーが行われた。何百人いたのだろうか?退官記念でこんな出席者の数にお目にかかったのは初めてである。
真鍋さんは内田先生の弟子であり構法の人である。広義のディテールの研究者。この歳になってもまだまだ分からないディーテールについて時々読むディーテール解説書が真鍋著だったりする。
ディテールというと僕の中では二つに分類される。一つは建築を作る「いろは」のようなもの。音楽で言えば音階である。つまり「ドレミファソラシド」である。音程を作る楽器をやった人ならだれでも分かると思うが、そういう楽器の練習の3分の1は音階である。何も面白味もないドレミがちゃんと引けるようになるまでひたすらマシンのようにひかなければ次の練習には進めない。建築も同じである。建築の最低性能を担保するこのドレミディテールはひたすらその原理と一般的手法を暗記して初めて図面が描けるものだ。僕はカードにこれらドレミディテールを書き写して暗記した。
そしてもう一つのディーテールは意匠ディテールである。これはできなくても雨漏りするわけでもないし、隙間風が入るわけでもない。しかしこれを知らないとカッコいい建築は作れない。音楽で言えば練習曲である。音階が終わったら練習曲をひたすら練習してやっと曲に進める。このディテールは原理があるわけではない。一つの場所に対して無数の方法がある。だから設計者はこれらのディテールを自分の好みで数多く暗記していないと図面は描けない。その意味でこれは作文する時の言い換えのボキャブラリーのようなものである。「多分」と表現するのにprobably, presumably, certainly,などのいろいろな表現があるのと同様である。
「ドレミ」ディテールと「言い換え」ディテール。これらを覚えてやっと図面は描ける。そしてさらに言い換えを自らの言葉で置き換えられるようになって初めて自分のデザインになっていく。
真鍋先生のディテールの体系化は設計プロになるための最低限学ぶための最適なテキストだろうと思う。