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甲府のイデア

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1カ月ぶりの甲府。地鎮祭も出られなかったので着工してから始めて現場に来た。昨日が建て方で屋根の垂木以外はほぼ木軸が建ちあがっていた。昨日の甲府は今年最高の36.8度。大工さんは本当に御苦労さまである。
この建物は見ての通りとても普通の形をしている。仕上げも屋根は瓦葺き外壁は瓦調タイルとモルタル。このあたりに普通に建っている住宅とさほど変わらない。内部もベースは古典的中廊下。唯一普通じゃないのはコアと呼べるようなものが中に分散しており残ったところが部屋と見えるような状態になっているという点だけ。いつものことだが、建て方が終わるとこの骨が被覆されてどう変わるのだろうかと想像たくましくなる。甲府に来る車中読んでいた木田元・計見一雄『精神の哲学・肉体の哲学』によれば、イデアもエイドスも見ると言う意味の動詞、イディン(現在の不定形)とエイデナイ(過去の不定形)の過去分詞なのだそうだ。だからどちらも「見られたもの」という意味だったと言う。しかし徐々にイデアは目では見えない理念となり、エイドスは目で見える形となったと言う。この骨を見ているとこれは「イデアだな」と思う。いずれ見えなくなると言うことを含めて。そして徐々に被覆されながらエイドスが顔を出していく。この骨が服を着るとき、イデアがエイドスとなる過程が僕は好きである。

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