« 2009年11月 | メイン | 2010年01月 »

2009年12月28日

医学と芸術展

%E3%83%9F%E3%82%B1%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%AD%E8%B6%B3%E3%81%AE%E8%A7%A3%E5%89%96%E5%9B%B3.jpg
ミケランジェロ 脚の解剖図
森美術館で「医学と芸術」展が行われている。医学は限りなく芸術的であり、芸術は生命を相手にする限りこれも限りなく医学に近い。というのがこの展覧会のコンセプトである。15世紀ダヴィンチに始まる人体への眼差し、解剖学の確立、が芸術分野に大きな影響を与えたのは言うまでもない。一昨年バチカンでミケランジェロを見ながらこのマッチョな筋肉は一体なんだ?と思っていたが彼の解剖学への興味のなせる技である。17世紀心身二元論を訴えたデカルトは人間のメカニズムに迫り、人間論を著した。丸山応挙が白波の上で座禅する骸骨を描いていたのは既に18世紀である。デミアン・ハーストの手術室の油彩は畳2畳ほどの巨大画であり、スーパーレアリズムである。彼の生命への興味は深いものがあったことを知る。ヴァルター・シェルスの5名の老若男女の生前、死後の写真は衝撃的である。生死の訴求力がどれほどのものであるかをよく示している。
アートが人の心を揺さぶり続ける限り、そのテーマの中から命が消えることはなく、そうである限りアートと医学の関係が途絶えることもない。

2009年12月12日

オペラシティの展覧会3つ

pantonexhibition.jpg
coophimbelblauexhibition.jpg
初台オペラシティで行われている3つの展覧会がどれも楽しい。
NTTインターコミュニケーション・センターではコープ・ヒンメル・ブラウの「回帰する未来展」が行われている。展覧会というにはあまりに展示品が少なく入場料も安い。ただ展示されているものが少し刺激的である。風船のような家である。その中に入ると自分の心臓の鼓動が家に響き渡り点滅する。家が肉体の延長であることを示した作品である。文字通り身体化した家である。ヒンメル・ブラウはこういうことを60年代の後半に考えていた。彼らも68年組だとは知らなかった。しかし反体制派の彼らがいつしか体制派(と言ったら言い過ぎだろうか?しかしウィーン最大の設計事務所であるからには少なからずそうだろう)なのだから世の中そういうものなのだろうか?
次は同じICCでオープンスペース2009なるメディアアート展が無料で開かれている。ここに並べられた作品はただで見せるには勿体無いくらい上質である。それになんたって子供が楽しく遊んでいるのがいい。
最後はアートギャラリーで行われている家具デザイナーのパントン(パントンチェアで有名な)の展覧会。あのプラスティック一体成型のパントンチェアは未だに定番イスの座をデザイン界に確保している。展覧会の最初は彼の有名なイスたち。後半は靴を脱いで彼の曲線に包まれた空間を体感するものである。寝転がったり座ったり寄り掛かったりする。これはなんとも気持ちいい。こちらも別の水準で文字通り身体的である。パントンはデンマークの王立アカデミーで建築を学びヤコブセンの事務所で働くのだが初期の作品は解説にも書いてあるが北欧的ではなく、アメリカミッドセンチュリーデザインである。つまりあまり木が使われず、スチールと布である。このイスたちは座れないのだが見るからに座りやすそうなのである。デザインは実に斬新なのだがきっと座りやすいだろうと見て感じるから不思議である。だからこそパントンチェアはすたれないのだと思う。この時代のデザイナーは多分死滅しないだろう。というのも生産性と快適性を同時にまじめに考えているから。