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2008年02月09日

川俣正

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東京都現代美術館で川俣正の「通路」という名のインスタレーションが2月6日から始まった。美術館の中と言わず外と言わず3×6板のベニヤが並べられている。3ミリくらいの薄いラワンベニヤに20ミリ角くらいの角材で三角形の足をつけた縦看板のようなユニットが数百並んでいる。倒れないように砂袋で足が押えられている。この縦看板を並べて通路を作っている。その通路の途中にはスケッチや写真、世界各地でのインスタレーション風景のムービーが流されている。また美術展では珍しく途中でコーヒー売っていたりする。売り場の傍にはベニヤのベンチがありそこに座ってコーヒー飲みながらビデオを見ることができる。また数箇所でワークショップのように川俣さんの弟子か関係者がインスタレーションの模型を制作していたりする。うーんこの風景何かに似ていると考えていて思いついた。文化祭である。この安っぽさと気軽さはまさに文化祭。
川俣正の都市でのリアルなインスタレーションを見たことは無いのだが映し出されているビデオを見ていると、住民だ、役人だと登場しては文句言ったり、川俣が叫んだりして、すげー迫力なのである。その中でなんだか迷惑なような楽しいようなわけの分からない理不尽な物が現れてくる姿には異様な力が感じられる。そしてそれは何時か消えてしまう幻である。コラージュという技法がタブローというイリュージョンの枠組みの中に現実の異物を放り込むリアリズムであるならばインスタレーションはその逆である。都市というリアルな物の中に風前の灯火であるイリュージョンを挿入する作業である。
しかしその幻を社会と摩擦しながら雨風に耐えて壊れないように「構築」する力が凄みを持っているのだろうなあとビデオを見ながら想像した。一方美術館という保育器のような環境の中でのインスタレーションというのは何なのだろうか?その吹けば飛ぶようなぺらぺらの軽さは川俣自身が最もよく分かっているであろうし、そこには住人の介在もなければ都市との摩擦もない。それは一つの報告。テキストということなのだろうか。

2008年02月03日

後姿

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サントリー美術館でロートレック展が開催されている。その昔どこかで見たロートレック展より充実しているような気がする
ロートレックはパリの夜のスポットとしてのキャバレーのポスターなどを多く描いた。1864年に生まれ1901年に没した。36年の短い一生である。
ロートレックのポスターを特徴づけるものは何だろうか。例えばモネの色使い、セザンヌの輪郭線に相当するようなものは何か?例えばロートレックはシルエットを多用する。夜の世界の描写なのでそれはさもありなんである。また日本文化を好むロートレックは浮世絵からも多くの影響を受けており、その構図や人物描写に浮世絵との類似点を指摘できるようである。
僕が面白いと思う特徴は、メインの対象が横や後ろから描写される構図である。正面ではなく後ろや横にその対象の特徴を見出すロートレックの眼が面白い。確かに人物は背中や横顔の方がその人らしいことはよくあるものである。