ピエール・コーニック/CSH#22、
1960、ロサンゼルス、ジュリアン・
シュルマン撮影
篠原一男はよく美しいエレベーションが一つ
無いとよい建築にはならないと言っていた。
東工大100周年記念館の設計をしていた頃、
「その建物はどこから写真を撮るのか?」と
スタッフによく聞いていた。建築を社会化す
るためには、建築ジャーナリズムにおける写
真の重要性を篠原は強く意識していた。それ
が住宅であればなおさらである。篠原に限ら
ず、メディアを意識している建築家はル・コ
ルビュジエをはじめとして数知れない。
しかし一方でいい写真がとれればいい建築か
? という疑問も湧いてくる。つまり建築は静
止した一点から美しく見えることではなく使
う人の体験の中で、つまり動的な視線の中で
現れるのではないか?という疑念である。し
かしそうした体験的建築でもどこかにいい絵
がないと人に伝わらないというジレンマもあ
る。建築体験をうまく伝える視覚とは?